Answer
再発率が低く、合併症の発生が少ない術式を、タイミングよく、効率的に提供することが推奨される(推奨グレードB)。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」32頁より
解説
嵌頓や絞扼を合併した鼠径部ヘルニアに対しては、救命目的の緊急手術が適応となる。
一方、有症状あるいは無症状の鼠径部ヘルニアに対する待機手術のタイミングに関しては、エビデンスに乏しい。
待機手術の目的は症状の改善と嵌頓や絞扼の予防にある。
再発率が低く、慢性疼痛等の合併症を最低限に留める手術が求められる。
ほとんどの組織縫合法と鼠径部切開前方到達法によるメッシュ法(Lichtenstein、Plug、Bilayer、TIPP、Direct Kugel法)においては、鼠径管の開放が必要である。
一方で、鼠径部切開腹膜前到達法によるメッシュ法(Kugel法)、腹腔鏡を用いた修復法(TEP、TAPP、IPOM、LPEC)は、鼠径管の開放を必要としない。
鼠径管開放の有無と再発率に関係はない。鼠径管を開放する術式において、鼠径管内の処理は術式により異なる。
鼠径部ヘルニアを一期的に修復したいのであれば、myopectineal orifice(筋恥骨裂孔)を覆うことにより、再発は最小化される。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」32頁より
(ただし、太字への変更及び下線は筆者)
注記*
嵌頓や絞扼の可能性がある限り、外科医としては手術をあまり先延ばしにすることは避けたいところです。
私の得意とする方法は腹腔鏡下ヘルニア手術ですが、男性であれば鼠径部切開法でメッシュを用いるLichtenstein法、Plug法の準備も万全です。
心不全などの臓器不全のあり方に全身麻酔が必要な腹腔鏡手術は適しません。
また、経済的な負担で鼠径部切開法を選択する方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、両側であれば腹腔鏡手術に多くのメリットがあると思われますし、個人的にも若い世代の方に傷の小さな手術のメリットがあると思います。
前述しましたが、女性の場合は大腿ヘルニアの合併が20%近くありますので、腹腔鏡手術や腹膜前到達法による手術がよいと考えます。
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