院長ブログ

その「でべそ」。もしかしたら、ヘルニアかもしれませんよ。

院長の新谷です。皆さんは「臍(さい)ヘルニア」をご存知でしょうか。臍は「へそ」のこと。臍ヘルニアとは、おへそやその周りが大きく膨らむ状態のことを指します。おへそはお母さんの体のなかにいる時には臍帯(へその緒)で胎盤と繋がっており、その臍帯がおへそを通って胎児に栄養を受け取り、老廃物を捨ててもらっています。出産後には臍帯を切り離すため、おへそというのは体のなかで筋膜が欠損している場所、つまりもともと筋肉が弱い場所なのです。筋肉がない部分に負荷が掛かることで筋膜に穴が空き、内蔵が外側に飛び出してしまう。それが臍ヘルニアという訳です。

『でべそ』と『臍ヘルニア』ってなにが違う?認知度の低さゆえ、嵌頓してから気づくケースも。

臍ヘルニアは日本ではまだ認知度が低く、病気の重要性やリスクが知られていないのが現状。よくでべそと比較されるのですが、でべそは腹膜が正常の位置にある状態です。なかには臍ヘルニアである方がいるため、しっかりとした診断が必要。とくに成人の臍ヘルニアは嵌頓しやすく、子供のヘルニアに比べて約14倍とも言われているため注意が必要です。

最近のデータでは年間5,800件ほど手術が行われており、そのうち成人のヘルニアは約2,000~3,000件。前回テーマとして取り上げた鼠径ヘルニアが約16万件ですから、少ないと思われる方もいるかもしれませんが、恐らく認知度の低さが要因なのでしょう。気づいていないだけの『潜在臍ヘルニア』は、もっとたくさんいると思っています。

臍ヘルニアになりやすい人の特徴とは?

一番は肥満です。最近多いのはコロナ禍で外出や運動する機会が喪失したことにより体重が増加し、それに伴い「食べ過ぎたらお腹が痛くなる」といった違和感から診察を受けてヘルニアが発覚するケース。あとは加齢や、妊娠をしてお腹が膨らむ(体重増加)ということで女性が若干多いです。子供の頃にできるヘルニアは小児臍ヘルニアと言います。体が発育しきっていない状態でのヘルニアなので、穴は意外と大きいです。大人とは病態が異なります。

※ちなみに世界一の肥満大国と呼ばれるアメリカでは臍ヘルニアの専門クリニックがあるくらい身近な病気です。

手術しか方法はない?圧迫療法は有効?そもそも、何科で診てもらえばいいの?

圧迫療法はおすすめできません。物理的な欠損孔をうまく圧迫する手立てが少ないことが理由です。臍ヘルニアは穴が小さく、おへその奥から出ています。出てくる際には腹膜前脂肪という組織が膨隆していため、適切な位置に圧迫帯をつけるのは難しく、少しでもずれたところに腸が入り込んでしまうと、嵌頓のダメージが強くなります。正しい知識を持たずに処置してしまうと、より症状を悪化させてしまう恐れがあるので注意しましょう。

臍ヘルニアは消化器外科・一般外科で治す疾患です。形成外科の先生のなかにも治せる先生はいるかもしれませんが、臍ヘルニアの場合は筋膜の欠損部を塞ぐという処置が必要になりますので、知識のない先生がやるのはかなり困難かと。なかにはお腹の構造まで理解されている先生もいらっしゃると思いますが、数としてはさほど多くないと思います。

臍ヘルニアに予防方法はあるのか?

やはり肥満にならないということが重要なため、予防に関しては規則正しい食生活と適度な運動。これに尽きると思います。昨今の日本では、食の欧米化に伴って肥満の方が増えているのも事実。とあるデータによると男性よりも女性の手術件数が1.4倍という報告もありますが、肥満による腹圧上昇が原因の症例が増えていけば、男性の臍ヘルニアも増加していくことは間違いありません。この機会に食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

放置する危険性と、ご自宅でセルフチェックする方法について。

臍ヘルニアは鼠径部ヘルニア以上に嵌頓しやすい病気なので放置はかなり危険です。症状が進行するにつれて膨らみが大きくなったり、痛みや吐き気を起こしたり、ひどい場合では脱出した臓器が戻らなくなり、壊死してしまい緊急手術が必要となる場合もあります。

セルフチェックの方法としては、仰向けになり、でべその部分に指が入るかを確認する方法。人差し指が入る場合、穴は10ミリ以上になっている可能性があります。指が入る場合はでべそではなく、臍ヘルニアです。あとは食べ過ぎや飲みすぎで痛くなる、うつ伏せだと痛くて仰向けになるとラクになる、という場合も臍ヘルニアの可能性があります。

手術時間はたったの30分!日帰り手術も可能です!

臍ヘルニアの手術に関して、最近は腹腔鏡手術も普及してきましたが、当院では穴の大きさにもよりますが、おへそのくぼみの部分を切開する手術を提唱しています。ヘルニア門が2センチを超える場合はメッシュ(人工補強材)を使用しなくてはいけない手術になりますが、よほど大きなものでなければおへそを2センチ切開すれば手術可能。大掛かりな腹腔鏡を使用することが妥当かどうか、しっかり見定めた上で最適な手術方法を提案しています。お金も高くつきますし、資材、ランニングコストも掛かりますからね。

手術は30分前後。もちろん日帰り可能です。全体の流れとしては初診、手術、術後のチェックの3ステップ。手術前にリスクの説明をした上で、手術でしか治らないこと、手術せずに放置した場合のリスク、全身麻酔が必要なのでその説明、手術の合併症などを細かく説明。患者様がすべてを理解した上で安心して手術に臨める環境を意識しています。手術では皮膚に吸収される特殊な糸で縫合するため、抜糸もありません。縫ったあとは患部にシールを貼っていただき、3日経過したら取り除いてシャワーで洗浄する。これだけです。

「ヘルニアと一緒に、コンプレックスだったでべそもなくなって嬉しい!」と喜ばれる患者様もいらっしゃいます。少しでも気になる方がいたら、ぜひ当院へ。また自分は大丈夫という方でも、ご家族やご友人との会話に、この話題を取り上げていただけたら幸いです。

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