Answer
麻酔法別(局所麻酔、脊髄くも膜下麻酔、全身麻酔)の比較においては早期合併症(尿閉)の予防に関しては局所麻酔が優れるが、晩期合併症は差がない(エビデンスレベルⅡ)。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」54頁より
解説
局所麻酔が有用である術式はLichtenstein法であるとの報告が最多であった。
術後の創部の合併症に関して全身麻酔、局所麻酔には差がない。
術後の呼吸抑制は全身麻酔が脊髄くも膜下麻酔、局所麻酔に比較し有意に多いが、呼吸器合併症の発生頻度に差がない。
※「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」54頁より
注記*
局所麻酔のみで確実に実施できるのは鼠径部切開法の前方到達法のみであると思われます。
ALOHA外科クリニックの選択する麻酔はTAPPであれば全身麻酔(もちろん局所麻酔併用)、Lichtenstein法であれば局所麻酔 であり、いたってシンプルです。
【総合外科医の眼】
全身麻酔の合併症で日帰り手術を達成できない原因の一番は 術後悪心・嘔吐(PONV:post operative nausea & vomittingと言います)です。
その対策
①ガス麻酔ではなく完全静脈麻酔(TIVA:total intravenous anesthesia)でその頻度が減少します。
術後悪心・嘔吐 を予防する薬剤:
PONVの発生頻度は25~30%であるため、手術を受けるすべての患者に予防策を講じることは、医療経済的側面からも好ましくありません。
しかし、リスクの高い患者には予防策を講じることが推奨されています。前述したApfelの4大リスク因子の数によってリスク分類し、リスクに応じた対策を行います(表)。
表PONVの予防策
リスク因子の数(予測頻度) | リスク分類 | 対策 |
---|---|---|
0~1個(20%以下) | 低リスク | 予防策は行わない |
2個(40%) | 中リスク | 予防的に制吐薬を1剤投与 |
3~4個(60%以上) | 高リスク | PONVを起こしにくい麻酔方法(*1)の選択作用機序の異なる複数種類の制吐薬(*2)の予防的投与 |
* PONV を起こしにくい麻酔方法
・吸入麻酔薬を使用せずプロポフォールによる全静脈麻酔(TIVA)を行う
PONV に使用できる制吐薬
欧米ではステロイドであるデキサメタゾン(デカドロン)の使用が推奨されています、わが国ではPONV に 保険適応がありません。日本でも使用できる主な薬剤は、 オンダンセトロン塩酸塩水和物 、ドロぺリドール(ドロレプタン® )、プロクロルペラジン(ノバミン® )、 メトクロプラミドメシル塩酸塩(プリンペラン® )などであります。
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